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Oculus Riftの凄さその1 – 結局どれぐらい画面が大きいの?

Oculus Riftがなぜ凄いのか、ということを説明するために、記録のためにも何回かに分けて記事にしたいと思います。この記事について「そんなのもう知ってるよ!」という方は次回以降の記事をお待ちください。
また、本題のみ知りたい方は、Oculus Riftの画面の大きさを想定してみた!からお読みください!


従来のヘッドマウントディスプレイとどう違うの?

解像度はともかく、視界の広さにあります。この視界の広さというのは、言葉にするには難しいので、色々な説明を交えていきます。さて、昔の消費者向けのHMD製品の紹介には、視界内の画面の大きさを表現するために、

〇〇m先に〇〇インチの大画面!

という語句を良く用いていました。HMDやプロジェクターについて既にお詳しい方は分かると思いますが、この表現は、

5m先の木は10m や

10km先の山は標高900m

といった、どちらかというと相対的なスケールが使われており、ピンと来ません。画面の綺麗さや広さをちゃんと捉えるためには、液晶解像度と視野角で捉える必要があります。

液晶解像度について

液晶解像度は大きければ大きいほど綺麗になることを表します。プロジェクターを例にすると、いくら写される画面が大きくても、投影される映像の細かさはプロジェクターの内部にある液晶やDLPの解像度の影響を受けます。
コンピュータ側で高い解像度(1600×1200, 1920×1080)の画面が設定できても、手頃なプロジェクター内部の液晶はXGA(1024×768)やWXGA(1280×800)になってることがほとんどで、安いプロジェクタだとSVGA(800×600)ぐらいの解像度のプロジェクタがあります。
結局解像度の低い画面を引き延ばしているので、ボケてしまいます。液晶解像度が低いHMDは画面が小さいか、ボケて何なのか分かりにくい!と解釈できます。

視野角についての知識

さて、視野角ですが、先ほど〇〇m先に〇〇インチという表現を使ったと思いますが、方法としては、以下のNHK高校講座についてのページを見てもらったほうが早いと思います。
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/suugaku1/archive/resume027.html

講座ページにあわせて説明すると、
測定点から木までの距離 → 目の位置から画面中心までの距離
木の高さ → 画面サイズの半分
角Aの角度 → 視野角の半分
となり、角Aの角度=視野角が未知の場合、逆タンジェントを使って、画面中心までの距離と画面サイズから視野角を求めることができます。

「そんなのいいから、計算だけ教えろ!」という方は、googleの検索で、次のように入れてもらえれば、結果が分かります。

arctan([画面の大きさの半分]/[画面までの距離])/pi*180*2

[画面の大きさの半分]と[画面までの距離]をご自身で置き換えてください。
例として、SonyのHMZ-T2を例にしてみます。http://www.sony.jp/hmd/products/HMZ-T2/spec.htmlから、20m先に750インチを想定して計算してみます。1インチ=2.54cmなので、メートルに直すには0.0254を掛けます。入力する画面の大きさは半分の375を使用します。

arctan(375*0.0254/20)/pi*180*2

50.9322501 radという結果が得られましたか?このarctanはtanの逆関数として定義されており、(高さ/底辺の長さ)の比率より、斜辺の傾きを求めます。ただ、単位がラジアンなので、これを度に直すためにpi(円周率)で割って、180を掛けています。radは単位の名残なので、純粋に50.9322501という数字が視野角になります。
「約51度っておかしいじゃねーか!」と思った人はそのとおりです。ごめんなさい。この750インチというのは、テレビ画面の大きさの基準で、対角寸法になっています。上の計算によって得られる数値は対角視野角になります。

SonyのHMZ-T2の視野角45度というのは、画面左右に対する角度で、水平視野角を指しています。HMZ-T2は1280×720の液晶解像度で、16:9の画面比率なので、実際の画面の幅は約653.682インチになります。さて、水平視野角を求めるため、半分の326.841を計算に用います。

arctan(326.841*0.0254/20)/pi*180*2

45.0855091 radという結果が得られて公称値と同じになりました。
さて、何故わざわざ対角寸法の計算をしたかというと、数あるHMDの中には、公称する視野角が対角視野角になっていたり、水平視野角になっていたり、稀なケースとしては垂直視野角になっていることもあります。ちなみに上記の計算方法ではHMZ-T2の垂直視野角は推定で26.2847度(高さを367.696インチで計算)と、水平視野角に比べて小さくなっています。ただHMZ-T2の内部レンズは特殊なものを使っているので、実際にはもっと広い可能性もあります。


Oculus Riftの画面の大きさを想定してみた!

本題はここからです!Oculus Riftの開発者版は現在はDK1とDK2の2つのバージョンが出ており、いずれも水平視野角約90度、垂直視野角約110度と、とんでもなく広い視野角を持っています。ただ液晶解像度がDK1は1280×800(片目サイズ540×800)、DK2が1920×1080(片目サイズ960×1080)と、広い視野角に対して少ない印象があります。解像度は置いておき、視野角から「〇〇メートル先に〇〇の大画面!」の形式を計算してみます。

tan([視野角の半分]/180*pi)*[画面までの距離]*2

水平視野角が90度、垂直視野角は110度で、googleの検索にかける式はそれぞれtan(45/180*pi)*20*2tan(55/180*pi)*20*2となり、結果をSonyのHMZ-T2と比較してみると、

Oculus Rift:
20メートル先に幅40m、高さ57.1259m
SonyのHMZ-T2:
20メートル先に幅16.6035m、高さ9.3395m
oculus_vs_hmzt2
となり、視界の画面広さの違いが分かってくると思います。

10cm先での想定画面サイズはどうなるの?

これだけ大きさに差が出てくるのですが、Oculus Riftの実物から考えてみますと、そんな遠くにスクリーンを置く事はまずありません。
Oculusの本体を見た事がある人は分かると思いますが、眼の位置から、液晶面までの距離はだいたい10cm前後です。今度はこの距離から、画面サイズがどれくらいになるかを計算してみます。

tan(45/180*pi)*0.1*2
tan(55/180*pi)*0.1*2

10cm先に幅0.2m(20cm)、高さ0.2856m(28.5cm)あれ?なんか小さい?と思った人は、50cmか1mの定規を用意してみてください。幅0.2m(20cm)というのは片目のサイズなので、両目ぶんのサイズを考えたら、幅40cmになるわけです。妙にでかくね?と思った人は感覚が戻っています。つまり、Oculus Riftは本来それぐらいのサイズをコンパクトにする技術を駆使し、さらに価格までに抑えているところが凄いのです!
今回はSonyのHMZ-T2を比較対象として散々用いてしまいましたが、同じ画面までの距離に当てはめると、
10cm先に幅0.083m(8.3cm)、高さ0.046m(4.6cm)の画面サイズが必要になるので、HMDの先駆者として、すごい技術を持っていたわけです!


次回の投稿日は不定ですが、次回はどうやって想定サイズ(幅40cm、高さ28.5cm)をあの本体サイズに収める事ができたのか、そのギミックについて解説をしようと思っています。